「岡野の合格無料ゼミ」の岡野さんが、第16回ケアマネジャー試験の試験問題45について補足説明をしています。
厚生労働省から、最終の合格率などの発表がまだないため(12月14日現在)、先に書き込みが多い本年の試験問題45について、補足説明をさせて頂きます。
選択肢2については、試験当時に書いた解説の通りですので、選択肢1について以下説明を加えます。
まず、問題文です。「1.高齢者の介護施設における介護事故で最も件数の多いのは、転倒である。」
まず文中の「介護事故」の定義ですが、法令等に見つけられなかったため、平成18年度に厚生労働省が民間のシンクタンクに委託して制作した「特別養護老人ホームにおける介護事故予防ガイドライン」の中で、5ページに定義されているものが参考になるでしょう。
その上で、介護事故に関する全国規模の統計的な数値は見つけることはできませんでしたので、学術論文を探してみましたところ、以下のような説明があります。「介護事故に限らず事故の再発防止には何よりも正確な現状把握が必要だが,国レベルでの『事故報告基準』が存在していないために,全国でいったい何件の介護事故が起きているのか事故件数や事故内容はもとより,死亡者数や入院者数などの被害の実態も明らになっていない。」(佛教大学社会福祉学部論集「介護事故の現状と問題点」より)
この論文によれば、全国における介護事故に関してのデータはないようです。
その上で、この論文では「介護事故は圧倒的に転倒事故が多いことや、・・・」と書かれています。また、他の学術研究では、「本研究では介護保険施設における介護事故の発生状況および介護事故に関連するリスク要因について検討を行った。・・・発生件数が最も多かったのは「転倒」であり、・・・」(社会医学研究「介護保険施設における介護事故の発生状況に関する分析」)との記述を見つけることができます。
ちなみに、最初にみた特別養護老人ホームにおける介護事故予防ガイドラインでも、介護事故で最も件数の多いのは、転倒であるとは書かれていないものの、「事故予防のための手順・介護技術」として「転倒」を一番に挙げて説明しています。
よって、上述の学術論文、学術研究などを根拠に、選択肢1を正しい選択肢と導くことは可能です。
また、出題者の意図を汲むと、選択肢中に明確な間違い箇所を挿入するのが通常で、これを間違った選択肢として出題することは考えにくいです。これに関して、問題文に調査の根拠などが示されておらず、言葉足らずとのご指摘は当然あろうかと思います。
公的な調査がない以上、「高齢者の介護施設における介護事故で最も件数の多いのは、一般に転倒であるとされている。」くらいが問題文としては適当です。ただ、本サイトの過去問題集をやってこられた方だとおわかりだと思いますが、この手の言葉足らずの問題が多いのがこの試験の特徴です(ほぼ毎年のようにあります)。去年もこれを上回る悪問(問題1-2)がありましたが、結局訂正されませんでした。去年の試験問題解説でも、詳しく書きましたし、当サイトの問題集にも収録されています。その意味では、過去問練習をしっかりして慣れるしかありません。
興味のある方はご覧下さい。
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